SEASIDE PERFORMER/OWLBEATS
何も変わらない、相変わらず何かが足らない生活の中、天候だけが唯一の望み。と思える6月暮れからの数週間。空がグレーなのは私の心か桜島から降る灰か。南の国で色のついた雨を降らす雲を一人眺めていると、一羽の梟が空を切り裂いていく。それは鳶ではなく紛れもなく梟だった。哀愁をまとい空を割る刹那、その梟は私にこう話しかけた。「全部クソだな。」私は答える。「あー、全部クソさ。」
腹の底からの叫びをブチまけ、桜島は街を灰色に染める。人々の願いが雨を降らし、その色を落とす。「もう十分だ。またな。」と終わりを告げる梟が空を割ると雨は止み、街と人々は色彩を取り戻す。
これは循環の音楽なのだ。
ところで雨の日が天気が悪い日と決めたのは誰だ?
[Royalty Club]
ゆったりとムーディーにはじまり、バウンスし、ドラムンベースや変則的なビートミュージックへ展開する。それだけじゃあない。ダビーで、ソウルフルで、そして「いま」の音楽もつまっている。ブラスバンドがあり、もちろんラテンもある。OWL
BEATSの作り出す実験的かつ攻撃的なビートの背景にはこんなにも優雅でムーディで洒落た音世界が広がっている。それは一種の驚きだけれど、いずれにせよ、7月に世に出るのにふさわしい、夏を色鮮やかに彩ってくれるエレガントな一枚。
[disk union]